Class of 2017のNSです。今回は私が5月に10日間参加したAlaska Leadership Ventureについて投稿します。
Alaska Leadership Ventureの概要
Wharton Leadership Venture (外部リンク) は、学校を飛び出し外部機関の協力を借りて集中したリーダーシップ教育を行うプログラムです。大きく分けると、週末にフィラデルフィア周辺で行われるIntensiveと、数日間~2週間程度にわたり世界各地で実施されるExpeditionに分類されます。またその他にも、Workshopと呼ばれるキャンパス周辺でのセミナー・勉強会も複数開催されています。因みにこれらはWhartonから公式に提供されてはいますが、一部希望者向けの履修外プログラムですので単位取得はできません。
今回私が参加したのは10日間にわたるアラスカ登山合宿で、Expeditionの中でも比較的長期のプログラムに当たります。NOLS – National Outdoor Leadership School (外部リンク) というNPO教育機関と提携し、6名のインストラクター、2名のLeadership fellows (Leadership venutreの参加経験がある2年生)、そして20名の学生が参加をしました。現地では14名ずつの2チームにわかれ、日ごとにそのリーダーを代えながら、1週間強の期間を共に過ごしました。岩山での登山、雪山でロープをつけての登山、毎日の飯盒炊飯、テント設置、トイレ問題(!)など、ここでしかできない経験ばかりでしたのでひとつひとつを説明することはできませんが、以下ビデオをご覧頂くとイメージをつかんでいただけるのではと思います。
参加してみて感じたこと/学んだこと
第一に驚いたのは、アメリカにおけるリーダーシップ教育の充実度です。NOLSはアメリカ軍にも教育プログラムを提供しているNPOなのですが、Whartonのような教育機関との提携の歴史も長く、こちらの身体的レベルや学習ニーズが非常によく考慮されているなと感じました。まず身体的な意味では、初日から「体重の50%の重さの荷物を背負って岩山・雪山を歩きます」と言われて正直驚きました。腰痛や足のまめに苛まれながら歩き続けた1週間は、想像していたより遥かに辛かったです。他のメンバーも皆どこかで「辛い、どうしよう」と思ったタイミングがあったようで、その意味では「追い詰められたとき自分/チームはどう行動するのか」を知る機会を、絶妙なレベルで提供してくれたのではと思います。また学習ニーズへの理解という意味ではNOLSから参加してくれたインストラクター陣がすばらしく、常に「この特殊な経験が、実社会でどう活きるのか」を考えるよう誘導してくれました。参加する前はインストラクター=登山のプロだと思っていたのですが、蓋を開けてみると海軍出身で組織コーチングをしている人、弁護士、研究者等、多様な経験を活かしたインストラクター陣がこの学びの場を作ってくれていることがわかりました。このような幅広い人材がプログラムに貢献する基盤があること、またこれらの機会が私たちのような学生にも開かれているということは、アメリカのリーダーシップ教育の強さ・懐の深さではないかと思います。
第二の気づきは、人間は思った以上に感情に左右されるものだということです。特に目から鱗だったのは、「進捗がわからない努力ほど気持ちを萎えさせるものはない」ということを身をもって経験できたことでした。Leadership ventureでは毎日夕食後に振り返り (debrief) を行ったのですが、面白いことに、その日の行程の難易度とメンバーの疲労度とはあまり関係がないようでした。むしろ多くのメンバーを疲れさせたのは、「次の休憩がいつかわからなかった」「進捗がわからなかった」(雪山ではロープを張り続けていないといけないので、休憩時以外は前後の人と会話ができない為) という”漠然とした努力”の部分でした。自分がリーダーをしていると、小さな進捗 (例えば15km歩かなければいけない日の最初の1km) をチームにいちいち共有するのは憚られる気がします。ですが、実は進んだ距離自体はあまり重要ではなく、「正しい方向に着実に進んでいること」「自分の位置がわかること」を共有することにより意味がありました。簡単なことではありますが、自分が引っ張る立場になると意外と忘れてしまいがちではないでしょうか。
(因みに、ある軍隊での1番辛い訓練のひとつにも「目的も距離も知らせないまま、ただ走らせる」というものがあるそうです。そうすると、大抵の人が自分が本来走れる距離に遠く及ばず脱落してしまうとのことでした。)
第三の学びは、インストラクターの1人からもらったアドバイスで、「この経験や学びを人に積極的に話すように。なぜなら、ぱっと話せるくらいでないと大事なときに思い出せないから!」というものでした。これは、なぜ偉大なリーダーに素敵な”story teller”が多いのか、に対する、ひとつの良い説明なのではないかと思います。多くの場合経験は一度きりですが、その学びを「使える」状態に保つことができるかどうかはその後のメンテナンス次第です。優れたリーダーは、人に伝えたいと思って物語ることによって実は自分の学びを効率的に概念化し整理しているのではないでしょうか。個々の経験・学びを放置せず常に記憶の引き出しを整理しているからこそ、必要な時に迅速な意思決定ができるのかもしれません。そしてもちろん、他の人と学びを共有することによって新たな気づきを得られる可能性も広がっていくのだと思います。私は自分のことをわかりやすく/面白く話すのが得意でなく、アメリカに来てから特に苦労をしていますが、諦めず長い目で努力をしていこうと改めて自分に言い聞かせています。
上記の通り、私にとってAlaska Leadership Ventureは特別な経験になりました。長くなってしまうので敢えてふれませんでしたが、10日間の全て (本当に24時間!) を共にした仲間たちとの交流も、参加しなければ得られないものだったと思います。加えてアラスカの大自然はただただ美しく広大で、そんな場所に立ち入ることのできる幸運を噛みしめると同時に、私たちが普段どれだけ物質に頼ってゴミを捨てながら生活しているのかについても深く考えさせられました。Leadership VentureはWhartonが提供する特にユニークなプログラムのひとつですので、MBAをご検討の方には強くお勧めします。ご質問等ございましたら、いつでもお問合わせください。