春季休暇を利用して南アフリカ共和国のケープタウンで「Building New Markets」(新興市場に如何に参入するかという戦略、起業系の授業)を受講しました。
このクラスはウォートンのDEANであるThomas S Robertsonが「Outlines a Vision For Growth」の中で説明している3つの柱、「Social Impact」、「Global Presence」、「Innovation」のうちの「Global Presence」を強化する施策として今年の冬休みから開始されたGlobal Modular Classのうちの1つです。
Global Modular Classについて少し説明すると以下の通りです。
・冬季休暇、春季休暇期間中に主に新興国のビジネススクールと提携し開発した授業を各提携先のキャンパス等にて開講、提携先の学生と共に講義、ケーススタディー、ゲストスピーカーによるレクチャーを受けた後、グループプロジェクトに共同で取組み、レポート提出後単位取得となる授業。
・ 2011年冬季休暇に「消費材ビジネス(インド)」、「イノベーション(イスラエル)」、「エネルギー及びインフラビジネス(ブラジル)」、「ヘルスケアビジネス(インド)」の4授業が開講された。
・ 2011年春季休暇には「消費材ビジネス(中国)」、「金融ビジネス(欧州)」、「グローバルサプライチェーンマネジメント(中国)」、「新規市場創出(南アフリカ)」をテーマとした4つの授業が行われた。
当該カリキュラムが発表された昨年11月には授業についての情報があまりなかった為、冬季休暇の授業は受講しなかったのですが、冬休み明けにイスラエルやブラジル等でのクラスに参加した同級生から「ウォートンで受講したクラスの中で一番学びが多い授業であった」「機会があれば是非参加するべき」と強く勧められたこともあり、今回の春季休暇での参加を決めました。
実は春期休暇中にアフリカ出身の友人が企画していたアフリカトレックという学生企画(南アフリカ共和国のヨハネスブルグ、ケープタウン、クルーガー国立公園を旅行)に前々から誘われていたため、楽しい旅行を諦め授業を受けることに若干の迷いがなかったといえば嘘になりますが、振り返ってみるとこの授業に参加して本当に良かったと思っています。
理由は、以下の3点です。
①教授陣の授業の充実
1週間弱の授業ではありますが、ウォートンから3名、南アフリカの提携先スクールから3名の合計6名の教授から授業を受けることが出来、複眼的な観点で新興市場について俯瞰することが出来ました。ウォートンの教授のテーマは「参入戦略」、「アライアンス、リーダーシップ」、「Social Politics」、南アフリカの提携先の教授のテーマは「アフリカにおけるイノベーション」、「ファイナンス」、「ビジネス倫理」でした。夫々の専門分野の教授が新興市場への参入というテーマに関して独自の視点で講義を行うため非常に学びの多い内容でした。
②ゲストレクチャーの充実
今回はアフリカに限らずインド、中国、南米等の新興国の市場への参入戦略がテーマでした。この短期間でこれだけ広い地域をどうカバーするのか疑問でしたが、ゲストレクチャーの講義を受けて納得が出来ました。南アフリカに拠点を置く企業でアフリカ、インド、中国、南米に参入済の企業の経営陣から、大変興味深い話を聞けたことがその理由です。インドに参入しトップのマーケットシェア獲得に成功している大手保険会社、南米、中国で幅広くビジネスを展開するビール会社大手、アフリカ各国で拠点を拡大している小売大手、アフリカの新興国で携帯ビジネスを展開するIT系企業から生の声を聞き、意見交換を出来た為、業界、地域毎の違いや類似点等からの学びが多くありました。
③受講者のプロファイル
今回約30名が受講したのですが、ウォートンからはMBA、Executive MBA、学部の学生、提携先である南アフリカのビジネススクールからはMBAの学生、その他両校のアルムナイ、及び多国籍企業からの派遣者(タイ、中国より参加)が参加し、本当に多様なバックグランドのメンバーで議論を交わし、親交を深め、プロジェクトを通じて刺激し合うことが出来ました。年齢でみると20歳から60歳、出身地域も南北アメリカ、アジア、アフリカ、キャリアをみても金融、小売、コンサルティング、製造業、投資銀行、NPO/NGOと多彩であり、クラスの議論も予想外の議論の展開が沢山ありました。春季休暇明けにフィラデルフィアに戻ってきてから遠隔でグループプロジェクトの課題(私のチームは南アフリカの自動車サービス会社のアンゴラへの参入戦略がテーマ)に取組んでいますが特にアフリカ側のメンバーとのやりとりは新しい発見も多く大変刺激的です。
(参加者の集合写真)
色々と長く書きましたが、私自身ウォートンを選んだ理由の1つは米国トップビジネススクールの中でもグローバルプレゼンスが高く、米国経営ではなくグローバル経営が学べることです。今回のプログラム改編はまさにこの観点からも進化しており大変満足してます。
今回の改編の目玉の1つとして「LIFETIME LEARNING」も掲げられており、ウォートンの卒業生は7年に1度、ウォートンの1週間程度の授業を無料で受講できることになりました。今回早速アルムナイがこの制度を利用してGlobal Modular Classを受講していましたが、私も将来アルムナイとしてウォートンの授業を受ける楽しみが増えて嬉しく思います。
アルムナイを定期的にウォートンに呼び戻すことで、「アカデミックと実世界の結びつきを深める」、「アルムナイに生涯にわたるウォートンでの学びの機会を与える」、「アルムナイとの結びつきを深めてウォートンへのリターンを高める(講演、寄付)」など様々な狙い、効果があるものと想像しますが、このような仕掛けを導入したのは世界のトップビジネススクールでウォートンが初めてだそうです。これは学長が説明する柱の3つ目「Innovation」の成果の1つといえると思います。もうすぐ私達2年生は卒業しますが、卒業してからも是非ウォートンにはイノベーションの先端を走る存在であって欲しいと願っています。